古い写真を修復するとき、Photoshopを使って1ピクセルずつ傷を消していた時代がありました。
スタンプツールで破れを埋め、トーンカーブで色を補正し、レイヤーマスクで何層にも調整を重ねる。
その作業は気が遠くなるほど地道で、センスと根気が問われる“職人芸”でした。わたしには、それができませんでした。
ただ、その技術を持つ人たちを、尊敬の眼差しで見つめていたのです。
ニューラルフィルター
時が流れ、Photoshopに**「ニューラルフィルター」**という機能が登場しました。表情を変える、年齢を変える、色を加える──そして、写真を復元する。
かつて職人が何時間もかけて磨いてきた技術が、ボタンひとつで再現されてしまう。
それは、まるで魔法のようでしたが、うまくいかないことも多かった。
Nano Banana─
さらに技術は進化を遂げます。登場したのが、AIによる高精度画像補完ツール、「Nano Banana」です。従来の修復では想像に頼っていた細部が、AIの推論によって現実に近づいていく。
それは芸術であり、技術であり、そして科学でもあります。
すごい時代になったものです
わたしにはできなかったことが、いまでは誰にでもできるようになりました。けれど、それは単なる効率化ではないように思います。
技術の進化というよりも、「できなかったこと」を置き去りにしない優しさ──。
AIは人間の代わりではなく、人間の夢の継承者なのかもしれません。
