AIに限らず、新しい道具というのは、まずは「とりあえず無理やりでも使ってみる」ことから始まります。たとえば、蒸気機関はもともと水汲みポンプの改良として取り付けられたものでしたし、電気も「電気ショックで元気になる!」といった眉唾な使い方が先行しました。タイプライターも、当初はまるで楽器のように「音を打つ道具」として捉えられていたそうです。
つまり人間は、新しいものに出会ったとき、「強制的に使い」で試すことから始めた。それでも、時間をかけて少しずつ馴染ませていくうちに、やがて自然な使い方が見つかっていく。その過程で、“無理やり”だった使い方が、“便利”に変わっていくのです。
今のAIも、まさにその途上にあります。「とにかく使ってみる」ことが大切である一方で、「どう使えば本当に役立つのか」という距離感の調整も欠かせません。たとえば、スプーンで釘を打つのと、金槌で打つのとでは、成熟度がまったく異なります。
最初は不器用でも、意識して使い続けていけば、やがて「両手を使える」ようになる点です。道具が体の延長として機能するようになる――人類の歴史は、そうした積み重ねでできているようです。
| 道具・技術 | 初期の「使い方」 | 当時の評価・位置づけ |
|---|---|---|
| 蒸気機関 | 水汲みポンプの補助装置 | 効率が悪く「世界を変える」とは思われなかった |
| 電気 | 見世物小屋で「電気ショック健康法」として利用 | 実用性より珍しさ・話題性が先行 |
| 電話 | 「遠くの声が聞こえる!」という奇術的デモ | 科学のショーのような扱いで、日常的な便利さはまだ認識されていなかった |



