前回の記事では、ChatGPTのような生成AIを使って契約書を作るのは危険である、ということを書きました。
契約書は一字一句が法的拘束力を持つ文書であり、微妙な文言の違いが大きなリスクにつながるため、AIに丸投げするのは現実的ではありません。
しかし一方で、「契約のあと」に発生するトラブルの整理や準備には、ChatGPTが非常に頼りになるという側面もあります。
例えば「退去費用トラブル」のケース
たとえば、大学卒業で退去する学生が、ワンルームの原状回復費として70万円を請求されたという事例が講習時にありました。
内訳を見れば、壁紙の全面張替え、ユニットバスの本体交換などが含まれており、「これ、全部借主負担なのか?」と不安になるような内容です。
こうしたとき、ChatGPTを使えば、
- 国交省ガイドラインに基づいた**「どこまでが借主負担か」の判断整理**
- クロスや床材の耐用年数と費用相場の再計算
- 管理会社へ提出する異議申し立て文の下書き
- 消費生活センターへの相談準備
など、冷静にトラブルを整理する材料がそろいます。
他にも、こんな“トラブル整理”に役立ちます
- 高額請求やクーリングオフの可否を調べたいとき
- 相手への謝罪や要望を、冷静に文章にしたいとき
- 行政手続きで、必要書類や申請の流れを知りたいとき
- 職場や学校での対応に備えて、立場を言語化したいとき
ChatGPTは、感情に流されずに物事を“整頓”するのが得意です。
法的判断をAIに任せるのではなく、「その前に自分の頭を整えるツール」として使えば、むしろ強力な味方になります。
- 契約書の作成は、人間の責任と判断で。AI任せは危険。
- でも、契約のあとに起こる問題を整理する用途なら、AIはとても有効。
- トラブルに直面したとき、ChatGPTは“冷静な第三者”として動いてくれる。
AIに「判断を委ねる」のではなく、「判断するための材料を整える」ことに使う――。
それが、今のところ賢いAIの使い方だと思っています。



