――だからこそ、人のセンスが活きる時代へ
1. AIの進化と“見かけの完成度”
近年の生成AIの進化により、誰でも「それらしい絵」や「デザイン風の画像」を簡単に作成できるようになりました。確かにそれらは一見、美しく完成されたビジュアルに見えるかもしれません。しかし、それはあくまで“完成しているように見える”にすぎず、実際には本質的な意味や意図に基づいた「デザイン」とは異なります。
2. AIには、まだ「デザインする力」が宿っていない
現在のAIが得意とするのは、以下のような作業です:
- 指示された構図・色彩・スタイルの再構成
- パターンの学習と模倣
- 高解像度なビジュアルの生成
これらは、見た目を整える能力には優れているかもしれません。しかし、本来のデザインとは、「意図や目的に基づいて情報を整理し、見る人・使う人に伝わるよう構成する力」を指します。
この**“伝える構成力”や“意味を選び抜く力”は、いまだAIには備わっていません。**
AIは手を動かせるようにはなりましたが、「何を、なぜ、どのように描くのか」という判断は、いまも人間の側に委ねられています。

3. 誰でも作れる時代だからこそ、「誰が指示したか」が問われる
AIはツールとして広く普及しました。つまり、もはや「使えるかどうか」は問われず、「どう使うか」「何を作らせるか」という指示が重要となる時代です。
このとき鍵となるのは、AIに指示を与える側のセンス、思想、編集力です。
- 伝えたいことを言語化できるか
- 情報の優先順位をつけられるか
- 表現すべき価値を自覚しているか
こうした力こそが、AIを「本当に使いこなす人」と「それっぽく使う人」との差を生みます。
4. デザイン力とは「情報の意志」である
- “それっぽさ”に満足せず、「何を伝えるか」「どう感じさせたいか」に徹底してこだわる
- 「見た目を整えること」と「意味を構成すること」を混同しない
- AIの進化を歓迎しながらも、人間が持つ設計力や価値判断力の重要性を見失わない
つまり、デザインとは「情報に意志を与える営み」であり、それはまだ人間にしかできない行為なのです。
AIは、見た目の美しさを描けるようになりました。
しかし、「なぜその絵なのか」「その構成にどんな意味があるのか」を説明し、意味として構成する力は、いまだ人間にしか備わっていません。
これはAIの出す答え全てに言えることだと思いますが、“指示する力”“伝える意志”“意味を編集するセンス”が、真に問われているのです。



