──大阪ガスエンジニアに学ぶ、現場発MVP×AI活用
ベテランが去り、若手が増える。
多くの現場で起きているこの構造的課題に、真正面から向き合った事例があります。
それが、大阪ガスのエンジニアチームによる、AIを活用した技術継承の取り組みです。
この事例は、単なる「AI活用成功例」ではありません。
本質はむしろ、MVP(Minimum Viable Product)という考え方を、極めて現場的に実装した点にあります。
課題はシンプル、でも根深い
このチームは発電機の開発・メンテナンスを担う、いわゆる“技術屋”集団。
しかしここ数年でベテラン5人が退職し、残ったのは中堅と新人。
- 技術領域は電気・機械・化学と幅広い
- 機種も多く、それぞれ操作が違う
- 引き継ぎ用のマニュアルは存在しない
- そして、マニュアルを作る時間もない
新人の本音はこうです。
「マニュアルがあったら、どれだけ楽だったか…」
多くの現場が「分かっているけど手を付けられない」状態で止まる中、彼らは違う一歩を踏み出しました。
解決策は“立派なシステム”ではなかった
選んだのは、AI × 撮影 という、驚くほどシンプルな方法です。
- 作業をしながら、手元を動画撮影
- 作業内容を口に出しながら進める
- 動画をAIに読み込ませ、音声を自動で文章化
- 動画から必要な場面を切り出し、写真として貼る
これだけ。
結果、たった15分で実用的なマニュアルが完成しました。
ここで重要なのは、「完璧なマニュアル」を目指していないこと。内製化していること
- 体裁はシンプル
- 権限管理も承認フローもない
- でも、一人で作業できるだけの情報は揃っている
まさにMVPです。
これは「マニュアルDX」ではない
この取り組みを、「AIでマニュアルを自動生成しました」という話に矮小化してはいけません。
本質はここです。
- ベテランの“頭の中”にしかなかった暗黙知を
- 現場の動線のまま、最小の手間で外に出した
- しかも、内製化でそれを新人が本当に使える形で残した
文字と写真で残すことで、
- 騒音の大きい現場でも確認できる
- 記憶が曖昧になっても立ち返れる
- 「一人でやる怖さ」が減る
新人の「心強い」という言葉が、すべてを物語っています。
MVPとは「現場の尊厳を守る設計思想」
この事例が教えてくれるのは、
MVPとは単なる開発手法ではない、ということです。
- 現場の忙しさを前提にする
- できない理由を潰すのではなく、できる形に落とす
- 完璧よりも、「まず回る」を尊重する
これは、現場の尊厳を守るための設計思想だと思っています。
次世代が憧れる現場は、こうして生まれる
ブランディングの本質は「次世代への憧れの種まき」。この大阪ガスの現場には、確かにそれがあります。
- 技術を独占しない大人
- AIを“楽するため”ではなく“伝えるため”に使う姿勢
- 若手を一人にしない仕組みづくり



